ピアノを弾く黒猫
エピローグ
☆☆☆
あたしは、いつも通り大学を終え、奈々恵さんの所へ行った。
もう、迷わない。
「優ちゃん、いらっしゃい」
「奈々恵さん、お話があります」
「座って?」
奈々恵さんと向き合う形で座ったあたしは、話し出した。
「あたし、海外留学はしません」
「え?」
「決めたんです。
あたしは日本に残って、ピアノの先生を目指すと」
笑顔にはなってほしいけど、誰かのためにピアノを弾くのではない。
あたしは、あたしと同じくピアニストを目指す子どもに、ピアノを教えられたらと考えたのだ。
「折角良いお話を頂いたのに、ごめんなさい。
でもあたしは、日本に残りたいんです」
「初夜くんと、一緒にいたいの?」
確かに、初夜と一緒に日本にいたいという気持ちはある。
だけど、それだけの理由で残りたいとは思わない。
あくまで行かない理由の1つにしか過ぎない。