発進受信
それから、どんな本が面白いのか、どんな音楽が好きなのか、語り合った。

俺にとっては人に関心を持つ事がとても新鮮で、暖かかった。

彼女から発する電波も心地よい。

ああ、もしかしたら、恋ってのはこんなんかも知れない。

まだ恋と言うには不完全でいびつかもしれないけど、間違いなく、今が楽しかったのだ。

「おーい、準備できたぞー」

オヤージーの声が聞こえる。

「さて、じゃあ行きますか」

「はいっ」

俺は、知らず知らずのうちに彼女の手を握っていた。

小さな手がその手を握り返す。

体温を手のひらに感じながら下に降りた。
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