発進受信
一時限目。

国語だ。

科目担当は新田。

こいつはマジで楽しい。

セクハラぎりぎりな授業でいつも笑わせてくれる。

「こんな感じで猫は亀つぼに入って死んでしまうんだが・・・」

夏目漱石の「我輩は猫である」の授業だ、こいつはオヤージーと散々話したので内容とう
は完全に頭に入っている。

国語のテストほど簡単なものは無い、当然に思った事を当然に選択肢で選んでいくだけ
だ。

「よし、じゃあ、無垢そうな筑那美、この話で印象に残ったシーンは?」

学校に来ていない生徒が答えられるのだろうか。

「はい、『のんきと見える人々も、心の底をたたいてみると、どこか悲しい音がする』に感銘を受けました」

透き通った風のような声で淡々と答えた。

そしてまた教科書を眺める。
< 42 / 202 >

この作品をシェア

pagetop