満たされない心〜貴方が満たしてくれた〜

決断


「結衣…義父さんが結衣と話したいって」

麻衣子が携帯を渡してきた。


『お久しぶりです、結衣です』

「おぅ、結衣か、元気にしとったか?」

『はい、麻衣子がいてくれるので、なんとか……』

「そうか、そうか……康太のことか?」

『はい…康太はいつ帰ってくるんですか?』


私の質問に即答してくれない康太のお父さん。

「結衣、今なら康太と出会う前の生活に戻れるぞ?友達とも普通に外で会えるし、遊べる。家族にもいつでも会えるし、一緒にだって住める……」


……何を言ってるの?
康太と出会う前の生活に戻る?

そんなの……できるわけない。

「康太を忘れた方が結衣のためだ」


康太を忘れる?


『……無理です』

『私には……康太が全てです。康太がいない人生なんて…』
『康太がいないなら、私はこの世に未練はありません』


私の言葉にまた康太のお父さんは黙り込み

「……結衣や…康太に会う覚悟はあるか?どんな姿でもだ…」

どんな姿……
私はもしかしたら、もう康太はこの世にいないのかと一瞬思ってしまったけど


『どんな姿でも、康太は康太です』
『康太に会いたいんです』


「…支度しとけ……桜田を行かせる」

そう言って電話は切れた。
< 108 / 205 >

この作品をシェア

pagetop