満たされない心〜貴方が満たしてくれた〜
決断
「結衣…義父さんが結衣と話したいって」
麻衣子が携帯を渡してきた。
『お久しぶりです、結衣です』
「おぅ、結衣か、元気にしとったか?」
『はい、麻衣子がいてくれるので、なんとか……』
「そうか、そうか……康太のことか?」
『はい…康太はいつ帰ってくるんですか?』
私の質問に即答してくれない康太のお父さん。
「結衣、今なら康太と出会う前の生活に戻れるぞ?友達とも普通に外で会えるし、遊べる。家族にもいつでも会えるし、一緒にだって住める……」
……何を言ってるの?
康太と出会う前の生活に戻る?
そんなの……できるわけない。
「康太を忘れた方が結衣のためだ」
康太を忘れる?
『……無理です』
『私には……康太が全てです。康太がいない人生なんて…』
『康太がいないなら、私はこの世に未練はありません』
私の言葉にまた康太のお父さんは黙り込み
「……結衣や…康太に会う覚悟はあるか?どんな姿でもだ…」
どんな姿……
私はもしかしたら、もう康太はこの世にいないのかと一瞬思ってしまったけど
『どんな姿でも、康太は康太です』
『康太に会いたいんです』
「…支度しとけ……桜田を行かせる」
そう言って電話は切れた。