満たされない心〜貴方が満たしてくれた〜


「…わかった、結衣の好きにしなさい」

そう言ってお父さんは席をたった。

『桜田さん……あのマンションも使いません……あそこは康太のマンション……康太との思い出がありすぎて、一人で住むには……ちょっと辛すぎます』


「……それでは、お部屋をご用意…」

『桜田さん……康太のお父さんにもお伝えください……私が医者になるまで待っていてほしいって』

「結衣様……」

『康太の事、よろしくお願いします』

医者になるまで
康太に会わない……
会えば、多分……
私は康太から離れたくなくなる。

それじゃ、ダメなんだ。
私は決めたから……。

『桜田さんとも……少しの間、お別れです』
『桜田さん……今までありがとうございました』

「結衣様……私こそ、ありがとうございます……結衣様がお戻りになるのをお待ちしております」

『……麻衣子にも会えなくなります……麻衣子とお幸せに』

「……わかりました。もし、何かあれば連絡してください」


桜田さんは最後まで優しいんだ。
< 116 / 205 >

この作品をシェア

pagetop