満たされない心〜貴方が満たしてくれた〜
『こんにちは…』
まだ店は開いていない時間だった
カウンターに紳士的なおじさんがグラスを磨いていた
「……あぁ、もしかして働きたいって子かな?」
『はい、どうしても夜に働きたくて…』
「まあ、座りなさい……」
私は働きたい理由を伝えた
「夜のコンビニやファミレスでもいいんじゃないのかい?」
『……夜が嫌いなんです。一人の夜は孤独で嫌なんです』
「……お酒は飲めるの?……って未成年か」
『……やっぱり無理ですよね』
「……お酒を作るのが仕事だからね」
「作り方は教えてあげれるよ」
「味見は僕がするから、問題ないよ。まぁ二十歳になったら、味を覚えていけばいいし」
『え……それじゃ……』
「いつから働けるかな」
『ありがとうございます、いつからでも大丈夫です、今日からでも問題ありません』
私は少し興奮してお礼を言うと
笑われてしまった。
「では、今日からおねがいしようかな」
「僕はこの店のマスターをしている狩野です、よろしくね」
『よろしくお願いします』
こうして、やっと辛い夜から解放された。