満たされない心〜貴方が満たしてくれた〜


大学病院は最新の機械が揃っているから
何もない場合の処置法も資料室へ行ったり、ベテラン医師に聞いたりした

「そんなことまで調べてるの?」

周りの人にビックリされるくらい
私はガリ勉になっていた。

そして、ある患者さんに言われた

「先生、笑ったら可愛いのに」


私は笑っていなかったことに気がついた
康太から離れて、康太の役に立ちたくて
毎日頑張ってきた……
その代償として、当たり前の感情を失っていた。

笑ってないって……

さすがに堪えた。

私は久しぶりにバーへ行った
大学を卒業してからは言ってない。

今は研修医だけど、もう医者だから
バーで働くことは出来ない。


『こんばんは』


「いらっしゃい……結衣ちゃん」

『こんばんは、いいですか?』

「どうぞ……せっかく来たんだから貸切にしようかな」

そう言って、行灯の電気を消す

バイトを辞めてから
狩野さんは私のことを結衣ちゃんと呼んでくれるようになった。
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