満たされない心〜貴方が満たしてくれた〜


ガチャ


玄関が開く音がした。
私は玄関に急いで行き

『お帰りなさい、お疲れ様』

昔と変わらない言い方が自分でも懐かしい。

9年ぶりの康太は少しだけ大人に見えた
私の顔を見ると、優しい顔……

「あぁ、ただいま」

いつもと変わらない返事


康太の後ろには
少し大人に見える桜田さんがいた

『桜田さんも、お疲れ様です』


「……っ、結衣様……」

桜田さんは意外と感情がもろいんだ……

『あっ……嫌だな…泣かないでください』

『ご心配かけて、すみませんでした』

私が桜田さんに駆け寄ろうとすると
康太に捕まれ阻止された

『えっ、こ、康太?』

「俺より先に桜田んとこ行くんじゃねぇ」

『…いや、そうじゃなくて…』

桜田さんは康太の嫉妬に笑いながら

「若、明日はお休みされてください。それでは私はこれで失礼いたします」

『あ、桜田さん、お疲れ様でした』


ドアが閉められたけど、私を捕まえている腕は放してくれない。


『康太……いいかげん、放してよ』


「……さない……もう……離さない」


私を抱きしめながら、言う康太の声は少し震えてる……

『……ごめん』


「……ったく……待ちくたびれた」


『ふふ……けど、これが最短です』


「……一人にして、悪かった」

『お怪我はよろしいんですか?』

「…ふっ、よろしいです」


『まずさ……リビングに行こう』

「ん?あぁ」


そう言って私を抱きかかえリビングへ行き、そのままソファに座る

『普通に座っても……あ、大丈夫です』

康太は私を離したりしない

「俺が目を覚ましたのは、あの抗争から2年くらい経った頃かな……気がついたら姉の病院だし、身体は動かねえし……結衣がいねぇし……マジ焦った」

「結衣に会いたくて……けど、みんなに反対されたよ……結衣ちゃんの気持ちを踏みにじるのかって…」


『みんな?』

「あぁ、親父に桜田に姉、義兄さんもだ……あと、陽子さんにも……まさか陽子さんに言われると思わなくて…」


『……大学受験の日、陽子さん私に会いに来てくれたの……何も言わず……ただ御守りを渡してくれて……すごく嬉しくてねぇ……』


「へぇ……陽子さんが……」

『小百合さんなんで、どうやって調べたのか毎年誕生日プレゼントを送ってくれて……サイズもぴったりなの、嬉しかったな……』

「姉は結衣が大好きだからな……」


『私ね……康太と離れて一人だと思ったの……けど色んな人が必ず助けてくれて……私って一人じゃないし、幸せ者なんだって実感するんだ』
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