満たされない心〜貴方が満たしてくれた〜

リビングには

お父さんがいた


あの男は…いなかった。

少し安心した


「遅くに失礼いたします」

桜田さんがお父さんに頭を下げる


「いやいや、こちらがお世話になってしまって」


こちらに座って……なんて言ってる

私は桜田さんの隣に座り
お父さんを見た


『お父さん…借金って本当なの?』


私の発言に両親とお姉ちゃんは
真剣な顔になった。


お父さんは借金の経緯や
工場、従業員さんのこと、
この家についても話し始めた


その時……ガチャ


誰かがリビングに入ってきた



あ…
いた…の…


そこには私の大っ嫌いな
お姉ちゃんの旦那さんがいる。


「お?結衣ちゃん、久しぶりだね」

何食わぬ顔で話しかけてくる


『…お義兄さん…お久しぶりです…』


私は目も合わせず
膝に置いてある手を握りしめていた


大丈夫……大丈夫って暗示をかけた


お父さんの話は
義兄が来たことによって
私の耳には入ってこない。
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