満たされない心〜貴方が満たしてくれた〜
その時
「義理の兄だからって、俺の女に手を触れないでくれますか?」
その声の主は
『っ……康太…』
私の顔を見ると
康太の眉がピクって動いた
「結衣、荷物まとめろ」
そう言いながら私に近づき
私に触れようとしていた男の手を払った
「二度と、近づかないでいただきたい」
冷たく、少し低い声で康太は言う
「この男と一つ屋根の下で寝るのは嫌だろ?」
康太はわたしと同じ目線で
私の涙をぬぐいながら言う
私は頷き、荷物をまとめた。
「なんだよ。誰だよ、お前!?」
あの男は少し焦りながら康太に言う
「結衣の婚約者です」
康太は言ったが
私は否定もしなかった。
早く、あの男から逃げたかったから…