満たされない心〜貴方が満たしてくれた〜

ざわ

ざわざわ


「騒がしい…ね」

『…そうだ…ね』


私と麻衣子はヒソヒソ話していた。



「あれ、須藤組の…」
「ってことは、隣にいる美人って…」
「あのイケメンは今朝の…」
「あれって、須藤康太じゃね?」
「康太様だわ」


男子の声もするけど、
黄色い歓声もする……
桜田さんも康太もイケメンなんだ。

「…やっぱり目立つね」

『毎日のように見てたらイケメンなの忘れちゃう』

ヒソヒソ話していると

【静粛に……ただいまより、卒業式を行います、まずはじめに……】


卒業式はあっという間に終わった。

教室に戻り、卒業証書を筒にいれて鞄を持ち麻衣子に声をかけた。


『いざ、出陣!』

麻衣子は大笑いして

「結衣にとっては戦なんだ」

私と麻衣子は校門へ向かった。


玄関につくと、校門は人だかり。

「なにあれ……え?桜田さん?」

えっ?よく見ると
桜田さんが女子生徒に囲まれていた

「…なんかムカつく」
「……康太さんも囲まれてるけどね」

麻衣子の言葉に、人だかりに目をやる

『……康太』

桜田さんと同じように囲まれている
桜田さんと違うのは、周りの女が康太に触れていること。


やだ、触らないで……
泣きそう……

「結衣、嫌だね。男は女の気持ち理解してくれないよね」


そう言って麻衣子は私の手を引き
校門へ歩き出した。
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