別に好きになってねぇから。

…………あー。


だけど本の内容が中々脳に入ってこない。



好きなくせに好きなやつの名前すら書けなくて



今時ラブレターなんて書くやつ。



俺は好きとか付き合ってくれとかそんなのを言われるのは大抵口頭でだった。



ラブレターなんてベンテンウオなんていう結構レアな深海魚を捕まえるぐらい珍しいんじゃん。




だから気になって全然小説が読めない。



あぁ、どんなやつが書いた手紙なんだろう。



すげぇ頭の悪いやつに違いない。



そう言えば今日クラスの自己紹介で馬鹿なやつがいた。



床に転けてやる。



確か名前は…出てこない。



だけど顔はなんとなく覚えている。



茶髪のミディアムヘアで身長はかなり低めだったかな…。


あと何処から見ても馬鹿そうな顔。




「…綾崎くんっ!」



そんなことを思ってるうちにHRも呆気なく終わり帰る支度をしていた俺に話しかけてくる女。



…あ、馬鹿そうな顔の自己紹介の時転けたやつ。



そしてこいつはラブレター読んでと言い出してきた。




俺はHR来週テストって言われたし勉強したいから早く帰りたくて帰ったら読むって言ってそいつから離れた。




あの馬鹿そうな顔のやつがこのラブレター書いたんだ。



確かに漢字書けなそうなやつだよね。




まぁどうせ家帰っても読まないけど。



受験生なんで勉強に専念しないと。




そう思って階段を降りて下駄箱に向かっていたら馬鹿そうな顔のやつに引き止められた。




そして今すぐ読んでなんて言う。



こいつは漢字も書けないで人に迷惑をかけるのが好きなやつなわけ?



俺、帰りたいんだけど。




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