別に好きになってねぇから。
「じゃ私はこれで。あ、アンタ澪あんまりいじめてやんなよ~」
そして夕槻澪の友達は俺の前から立ち去った。
いじめてやんなよか…。
「…あ~。綾崎くんいた~!」
天然水を1本持って俺のほうへ走ってくるあいつ。
自分は結局買わなかったんだ……
今も走って疲れて汗だくなのに…。
馬鹿なくせに告白にこんなに難解な暗号で告白するなんてこいつマジですげー馬鹿。
だけど恋愛にすげー本気なんだなぁ。
…なんかいじめる気若干萎えた。
こいつ案外いい奴かもしれない。
そう思った次の瞬間、あいつは床に転倒。
綺麗に滑ってきれいに転けやがった。
…大丈夫かよ。
いやそれにしても走って思いっきり床に空き缶があることに気づかないまま空き缶で足滑らして思いっきり足開脚してるあいつ。
「…お前ドジ過ぎだよ。目の前に何があるかぐらい確認しろよ」
「だって綾崎くん待ってると思ったからっ…!周りなんて気にする余裕なかったよ」
えへへと笑うあいつ。
“まだ本当は好きなのかもね”
「お前さ」
俺のこと本気で好きなの?
「いやなんでもない」
こいつが俺をどう思ってろうと別にどうでもいい。
こいつがいい奴だろうが馬鹿なやつだろうがどうでもいい。
だけど気になって仕方なかった。
「…ふぁ~。それにしても疲れましたな!こんなに思いっきり走って転けたの久々」
そしてこいつは手に持ってる天然水を飲み始めた。
…は?
それ俺のじゃねぇの?
「あ~!これ綾崎くんのだった!」
だよね。
ごめんと飲みかけの天然水を俺に渡そうとするあいつ。
「いいよ。飲めば?」
「世界一美味しい天然水なのにっ!?いいのっ!?」
「別に。じゃあ帰ってさっさと勉強」
しねぇとなぁ…
なんて思う半面、まだこいつといたいなんて思うんだけど。
なんでこんなこと思ってんだよ、俺。
こいつのためにもさっさと帰宅して勉強を……