あなたに恋してる

言葉もないのに自然と歩みを進めていくと、沈みかかった夕陽が2人の影を作っていた。

私達が歩く後を手を繋いだ影達が追いかけてくる。

それに気づいた真斗は歩みを止めて、影同士がキスするように顔を寄せパシャと影を撮る。

どうして⁈と顔を傾けてみても微笑むだけで教えてくれない。

影達は、幸せな恋人同士に見えるのに私達はなに⁈

また、歩みを進める真斗の背にむかって
口先だけでつぶやく。

愛してる…

その時、私の影もつぶやいていたなんて……

ーー
ーーーー

お兄ちゃん達のいる場所に戻ると目くじらを立てているお兄ちゃん。

手を繋いでいた私達を見て更にご機嫌斜めになる。

「どういうことか後で説明してもらおうか?」

その背後で、ニコニコとして不気味な笑みを浮かべている悠ちゃんとえみり。

やめて……聞かないでと目で訴える。

それなのに……横に来て

「美雨…後で説明あるよね」

お兄ちゃんの尋問より怖いえみりの尋問に身震いする。

真斗も共犯のくせに

「頑張れよ」

なんて言って手を離して行ってしまう。

繋いでいた手の温もりが消え無償に寂しさを感じ、その手を見つめてせつなくなる。
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