悪い男〜嘘つきより愛を込めて〜

肩や背にキスを落とされ、ざわつく肌と

甘い疼きが湧き起こり、彼は唇を這わせ

たまま上着を脱ぐと一つ一つ身につけて

いる上半身全てのものを脱いでいき、腕

時計を外している。


彼が、次にすることが頭の中をよぎる。


確か、私のピアスに触れた。


そう言えば、あの時つけていたピアスも

チェーンピアスだったはず…。


腕時計をテーブルに置いた彼は、やはり

同じように私の身体に触れば、ぶるっ

と体が身震いする。ふっと鼻先で満足

気に笑った。



刹那…彼に抱えられベッドの上に倒れこ

むと、彼の引き締まった体を目の当たり

にして頬を染めていた。


あの日のように、お酒に呑まれていれば

少しは大胆になれるのに、彼に見つめら

れ動けずにいる。


「……胡桃」


彼に名前を呼ばれれば、身体中に電気が

流れたように痺れ、彼の肌に磁石のよう

に引き寄せられる。


首に腕を絡め、見つめ返す。


言葉なんていらない。


心の奥底で『好き』と叫び、自ら彼を引

き寄せ唇に触れる。


目を見開き、驚きを隠せない彼…


だが、それも一瞬の事で、彼は自分を取

り戻し妖艶に微笑んだ。


この気持ちを彼に知られたくなくて、顔

を背けるも色気を漂わす声で命令してく

る。


「俺を見ろよ」


背けた顔をゆっくりと戻せば、視線が絡

む。


「胡桃……」


「……」


心を見透かされそうで…


答えずに唇を噛み、無理というように彼

を見据えるが彼は近づいてくる。


耐えきれない沈黙。


「………」


「参った…そんな顔で見られると我慢で

きないだろう。煽るのがうまくなったな



いったい、誰がお前をこんな身体にした

んだ……もう、誰にも渡さない」


最後の方は怒りを含んだ低い声でつぶや

く。彼の言っている意味が理解できない

まま、彼の腕に堕ちていった。


あの日ように何も考えられなくなるまで

乱され、意識を手放しても何度も引き戻

され刻みつけていく。


その度に増えていく赤い痕、彼の肌にも

爪痕を残す。


研ぎ澄まされた肌が、敏感に反応して震

える身体が止まらない。


それでももっとと彼を求めてしまう自分

を止めれなかった。
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