悪い男〜嘘つきより愛を込めて〜
性急な動作


時間を惜しむように私の身体を知り尽く

した男は攻めてくる。


その間、キスはどんどん深くなりキスだ

けで意識が飛びそうなほど濃密なくちづ

け。


「…んっ…ふっ〜んっ…あっ」


「俺も…キスだけで気持ちいい。…でも

足りない」


「やっ…ダメ」


「何が⁈…」


「……」


耳元で甘く囁くハスキーな低音ボイスに

全神経が反応し、ぞわっと肌が粟立った

瞬間彼の背に腕を回し引き寄せた。


それが合図だと確信した男


「んっ…ごめん、我慢できない」


一言謝ると動きを速められ官能を逃そう

と身をよじるが、一気に高みへと連れら

れていくと男の背から手が離れ宙に手が

舞う。


「…零…」


「俺に掴まれ…」


しがみつき、甘い余韻に浸ることもなく

脳内が真っ白に染まる。


クタッとした体が男から離れ、ベッドに

沈む。


数秒⁈数分⁈


記憶を失っていた。


唇にくちづける温かな唇が気持ちよく虚

ろな頭を目覚めさせた。


パチリと目を開くと、彼が微笑んでいる。


彼が頬、唇、額と優しくキスを落として

いく間、現状を把握し青ざめた。


(やっちゃった)


仕事中なのに、上司とホテルでするなん

てあってはならないのだ。


キスならまだしも…


いや‥キスも駄目だけど…


「胡桃…時間ないから服を直して…」


先ほどまでの温もりが離れ、彼は身なり

を整えている。


はぁ〜


彼の切り替えの早さにため息がでた。


彼に背を向け身なりを整えているとフツ

フツとわき出る苛立ち。


時間を気にするなら、しなければいいの

に…私、抵抗したよね⁈


「あれは、誘っていたよ」


背後に立つ零が、意地悪く笑みを浮かべ

ていた。


「もしかして、声に出してました⁈」


「あぁ、聞こえた……胡桃の抵抗はかわ

いい。あんなの煽ってるとしか見えない

よ。他の男の前でするのは許さない…ま

ぁそんなことにならないけど…」


「……」


悔しい


容易に彼を受け入れてしまう自分の弱さ

それを見透かした表情で笑みを浮かべて

いる目の前の男に……
< 41 / 69 >

この作品をシェア

pagetop