悪い男〜嘘つきより愛を込めて〜
峯岸のとある日のつぶやき
大和建設との合併話が無くなり、愛してやまない女を手に入れて更に仕事に集中しだしてくれてホッとしたのも束の間…女にうつつをぬかし、副社長という肩書を利用して定時に帰るという不届き者。
その男が今日もやってきた。
副社長室のドアを開け登場した男は、朝からなぜか機嫌が悪く、ドサッと椅子に座った。
念願の女を手に入れ、側に置きたいからと結婚もしていないくせに同棲までしだした…独占欲を露わにして男を近づけない。式も目前なのに……まったく、何が不満なんだか⁈
だが、副社長の機嫌が悪かろうと会社は動いてる。
「おはようございます。本日の日程ですが、10時より第一会議室でのミーティング後、設計部門との打ち合わせがあります。午後から大学での講演会後夕方、大和建設新社長の祝賀パーティがございます。…後、こちらは本日中に見て頂きたい書類ですので、ご確認お願いいたします」
黙っていた男が、やっと口を開いた。
「胡桃が…妊娠したかもしれない。朝から青白い顔をして吐いてるんだ。どうしてこんな時に仕事なんだ⁈側にいてやりたいのに…キャンセルできる仕事はキャンセルしてくれ」
はぁっ(怒)
お前は自分の立場をわかっているのか⁈
「副社長…宮内さんは、病院へ行かれたのですか?」
「……午前中に行くと言ってた。やっぱり、俺も一緒に行くべきだったよな⁈」
まったく……
呆れて物も言えない。
「………宮内さんは立派な大人です。1人で病院へ行けます。何かあれば連絡されるでしょう。今、あなたがするべきことはなんですか?」
上から見据える。
「チッ、わかったよ。やればいいんだろう」
舌打ちし、渋々顔で書類に目を通し始めた。
だが、すぐに上目遣いで様子を伺ってくる。
「池上の祝賀パーティには行かないとダメだよな⁈」
お前は子どもか(怒)
「もちろんです。大和建設新社長の祝賀パーティですから次期社長としてのご挨拶するべきです。…社長も出席されますのでご挨拶がすめばお帰りになられても構わないと思います。社長も宮内さんの妊娠を喜んでくださるでしょう」
渋々顔だったくせに破顔させて笑顔を見せる零。
単純な奴め。
少し前のお前からは想像もつかない。
仕事が一番で女なんてストレスのはけ口だったのに、女1人の為にこんなにも変われるものなのか⁈
まぁ、仕事さえちゃんとしてくれるならどうでもいい。