悪い男〜嘘つきより愛を込めて〜
「店に向かう時間だ。6時には迎えに行
く…」
彼に促され会社を出たが、理不尽な命令
偽恋人の役…それもキス付き
あんな濃密なキス
あの日の夜を思い出してしまう。
一夜だけの相手だった男
その男が上司として再び現れ、私だと気
づかないで……(疑っている⁈)
だから、あんなことをしたの⁇
私が彼なら気づいていたとしても気づか
ないふりをして側に置かない。
3カ月後には結婚する為に辞めるという
女を無視すればいいだけだ。
第一秘書がいるのに辞めるという女をわ
ざわざ第二秘書にする意味があるのだろ
うか⁈
重要な仕事を任される訳でもない。
ただ秘書という名の雑用
お茶出し
電話番
コピー
必要な時の恋人役
後は何があるかしら?
彼の考えがわからない。
彼の不可解な行動は何を意味するのだろ
う⁇
そうよ
パーティーで会った時に別人だと彼は思
ったはずだ。
気の回しすぎだ…と思いたい。
でも、唇が……まだ熱い。
熱が冷めないのはどうして⁇
触れあったキス
唇の感触が忘れられない。
そして、絡めあった舌が痺れたようにジ
ンジンとしている。
恋人にでもするような熱烈なキス
あの日の熱い夜も先ほどと同じように彼
から熱烈なキスをしてきて、キス一つで
蕩けるように身体中全て身を任せてしま
った。
また、あんなキスをされたら私の意思と
関係なく身体が反応してしまう。
どうすれば、彼との濃密なキスを防げる
のだろう⁇
なるべく触れ合う時間を避け、彼に近寄
らない方がいいかもしれない。
そんなあやふやな答えを出し、歩みを進
めた。
メモの指示通りお店に来てみると、店員
にうながされるまま、全身エステを受け
る。
そこまでする必要があるのか疑問を持ち
ながらも、彼女らに指示しているのは彼
なのだと諦めた。
既に用意してあったAラインのワンショ
ルダーのロングドレス。
肩が開き、胸が露わになるギリギリのラ
イン。背は大きく開きスリットが足の付
け根ギリギリのところまで入っている赤
いドレスを着せられ、全身エステをした
理由がわかってしまった。
こんな露出度の高いドレスなんて私には
似合わない。