命の上で輝いて
美沙は雅子が帰ってしばらく天井を見つめ今日の出来事を振り返った。とてもよく泣いた日だと思ったが、それもまた仕方がないとも思った。
美沙は少し体の痛みを感じながら起き上がって、ベッド横の箪笥状の引き出しの上に置いてある携帯電話を手に取った。
病院からは一人部屋のために携帯は部屋の中で使ってもよいと言われていた。
美沙は携帯電話を開いた。揺れているクマのストラップに気が付く。薄暗くてよく見えないため、照明の強度を中くらいにしてつけた。帽子を被っている小ぶりのクマのキャラクターはいかにも美沙が好みそうなものだった。
携帯電話の画面には相変わらず「暗証番号」の四文字が躍っていた。美沙の記憶のある頃の携帯電話の四つの数字を打ち込んでみるが、合わない。どうやら携帯電話を買い替えた時に「自分」は暗証番号を変えたらしいのだ。美沙は自分の生年月日関係、そして美沙の彼氏である翔の生年月日関係、その他家族の生年月日など思いつく限りの四文字を入れてみても駄目であった。
着信やメールが何件か来ているのは、暗証番号がわからなくても確認できる。おそらく美沙の身を案じてのものであろう。しかしながらそれを見ることはできなかった。もどかしかった。
暗証番号を入れなくても電話ができることになってはいるが、誰かに電話をしてみる気持ちにはなれない。
美沙はため息をつき元あった場所に携帯電話を置き、照明を切った。
今朝階段から落ちた後、美沙は救急車でこの病院に搬送された。救急車の中では意識はあり、診察を終えてから美沙は数時間眠った。目覚めた後に美沙は「記憶がない」と言った。脳の精密検査を行ったが、異常は見当たらなかった。
その時の数時間の睡眠のためか、美沙は眠気を感じてなかった。
美沙は少し体の痛みを感じながら起き上がって、ベッド横の箪笥状の引き出しの上に置いてある携帯電話を手に取った。
病院からは一人部屋のために携帯は部屋の中で使ってもよいと言われていた。
美沙は携帯電話を開いた。揺れているクマのストラップに気が付く。薄暗くてよく見えないため、照明の強度を中くらいにしてつけた。帽子を被っている小ぶりのクマのキャラクターはいかにも美沙が好みそうなものだった。
携帯電話の画面には相変わらず「暗証番号」の四文字が躍っていた。美沙の記憶のある頃の携帯電話の四つの数字を打ち込んでみるが、合わない。どうやら携帯電話を買い替えた時に「自分」は暗証番号を変えたらしいのだ。美沙は自分の生年月日関係、そして美沙の彼氏である翔の生年月日関係、その他家族の生年月日など思いつく限りの四文字を入れてみても駄目であった。
着信やメールが何件か来ているのは、暗証番号がわからなくても確認できる。おそらく美沙の身を案じてのものであろう。しかしながらそれを見ることはできなかった。もどかしかった。
暗証番号を入れなくても電話ができることになってはいるが、誰かに電話をしてみる気持ちにはなれない。
美沙はため息をつき元あった場所に携帯電話を置き、照明を切った。
今朝階段から落ちた後、美沙は救急車でこの病院に搬送された。救急車の中では意識はあり、診察を終えてから美沙は数時間眠った。目覚めた後に美沙は「記憶がない」と言った。脳の精密検査を行ったが、異常は見当たらなかった。
その時の数時間の睡眠のためか、美沙は眠気を感じてなかった。