命の上で輝いて
部屋に戻った美沙は、ちょこんとベッドに座った。
ぼおっと部屋を見渡す。ゆっくりと見渡す。
熊のぬいぐるみを手に取ってみる。枕をこぶしを作って軽く殴ってみる。
またぼおっとする。両親が二階へあがってくる音がして、美沙は急いで部屋の電気を消して、ベッドへ潜り込んだ。
両親の足跡が部屋の前で止まる。雅子がノックをする。美沙の心臓の鼓動が早くなった。
「開けるわよ」
雅子は部屋のドアを開けた。
「寝てる?さっきはごめんなさいね。もし何か不安なことがあるなら、相談してね。おやすみなさい」
そう言ってドアを閉めた。美沙はひょっこり、毛布から顔を出した。
涙が両目から湧き上がってくるのを、彼女は全くもって止めることができなかった。それを美沙は正確に時間を図ったわけではないが、おそらく数十分は止まることなく流れ出たであろうと彼女は感じた。
涙がひとしきり流れ終わった後、美沙の頭は空っぽだった。
暗闇の中で、天井を睨み付けていた。
どうやら眠れそうもない。気が付くと、カーテンからほんのり明かりが射し込んでいるのに気が付いた。音を立てずに、毛布をめくり、ちょこんとベッドに座った。フローリングに光の線が入っている。
すっと足をその方向へ伸ばしてみる。フローリングの光の線は途切れ、美沙の足の甲をほんのり照らす。足をひっこめると光の線がまた出来上がる。
立ち上がり、カーテンをゆっくり開ける。レースの隙間から月が見えた。レースも開くと。いくばくかの星が輝いている。
どこでだって月は優しくあらゆるものを照らし、星も輝く。
そんなことを思うと、美沙の瞳からはまた涙がこぼれた。
その夜、美沙は微睡んだが、結局寝付くことはできなかった