命の上で輝いて

「はい、これ」
雅子は着替えを入れたリュッサックを美沙に渡した。
「美優はもう帰りなさい。明日も学校でしょ。」
「ええ、もうちょっといいじゃん」
雅子は病室のカーテンを閉めた。
美沙はリュックサックを開けて中身を確認した。
「美沙、お母さんわかんないから適当に持ってきたけど、大丈夫？」
「うん、大丈夫。」
「あら、そう。いつも美沙ファッションに厳しいから、何か言われると思ったんだけど」
「そんな文句、言ってる場合じゃないから。ありがとね。」
美優と雅子は顔を見合わせて、少し不安そうに顔を見合わせて肩をすくめた。
「お姉ちゃん、なんか人が変わったみたいだね。優しいもん。」
美沙は動きを止めた。
「私変わっちゃった？」美沙は不安そうに聞いた。
美優は言った瞬間に、その発言が不相応だったのかもしれないと思い、手を口に当てた。
「いや、記憶ないんだし、二年くらい前のお姉ちゃんはそんな感じだったと思う。」
美沙は俯いた。
「大丈夫よ、焦らなくても。ゆっくり取り戻していけば。大学の事とか今は気にしなくていいから。」
雅子は優しく美沙に言った。
「まぁちょっと昨日までの美沙とは違うけど、でも美沙には変わりないんだから思い出したくないことがあったら思い出さなくても良いのよ。」
美優も雅子の言うことに頷いた。
美沙は肩を震わせて、布団を両手で強く握りしめ、涙を流した。
「あーあ、お姉ちゃんまた泣いちゃった」
美優はしばらくして、「じゃあまた来るね」とポンポンと軽く美沙の肩を叩き、騒がしく病室を後にした。