おばあさんと黒い帽子
ある日、男が新聞を読んでいると
自分の町の事件が載っているのを見つけました。
どうやら夜道を歩く老人ばかりを狙う
ひったくり泥棒がいるようです。
いつもの仕事帰り、たこ焼き屋ミツコに行くとおばあさんは困った顔で言いました。
「ごめんなさいねぇ。
今、丁度売れた所だから焼くのに10分くらいはかかるのよ」
「かまいません。待ちますよ」
男はニコリと笑って答えます。
おばあさんがたこ焼きを焼いていると、
あの事件の事が気になりました。
「おばあさん、知っていますか?
最近、お年寄りばかりを狙うひったくり泥棒がいるのです。」
おばあさんはたこ焼きを回しながら言います。
「私なんかそんなにお金を持ってないのよ。お金を取るより、私がたこ焼きを焼いてあげた方がお腹も一杯になって泥棒も喜ぶと思うけどねぇ」
男はそれを聞いて笑うのでした。