人間カード



電車に乗って、あたしは適当な席を見つけて座ると、イヤホンをスマホに差し込み耳につけた。


何も聞いているわけじゃないんだけど、こうしていると落ち着くんだよね。


「ねえー今月号のMyanMyanの表紙見たー!?」


少し離れた場所で、別の高校の女の子たちの騒ぐ声が聞こえてくる。


自然と耳に入ってくるほどうるさい声だった。


「見た見た! 超ヤバイ! もうあの表紙の笑顔は最高だよね!」


「そうそう! もう何であんな綺麗な顔なんだろうって! 羨ましいよね!」


「足長いし、色白いし、顔も整ってるし! 何か高校卒業するまでは芸能活動セーブしているらしいし、すごいよね!」


あたしはそんな会話を聞いて、耳を塞ぎたくなった。


そこに映っているのは、本当のあたしじゃない。



「もう、北川ユイの顔になりたい!」



あたしの名前は、北川ユイ。


職業は、高校生と、



芸能人だ。

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