人間カード
俺の名前は雨野ツキヲ。
大金をためらいもなく人間カードに注ぎ込んでいるが、別に金持ちなわけじゃない。
普通のサラリーマンだったけど、今は無職になってしまったニートだ。
おまけに今年で30歳になるのに、未だに彼女ができたこともない素人童貞野郎だ。
一つ取り柄を上げるとしたら、小さい頃からひたすら真面目に生きてきたことだけだろう。
電車では年寄りに席を譲るし、拾った財布は持ち主に戻ることを祈りながらちゃんと交番に届ける。
だが、そんな俺に災難が降りかかったのは今から2ヵ月前のことだった。
そうだ。つい、2カ月前まではニートじゃなかったんだぜ。
通勤時、朝の満員電車の中で、目の前に立っていた女が、突然、俺の手を掴んでチカンとか叫んできやがったんだ。
当然、俺はチカンなんてしていない。
むしろ、俺の隣に居る若くてイケメンな男の方が怪しかった。
だから、俺は言ってやったんだ。
犯人はこいつです。俺じゃありませんって。
そしたら、周囲は俺に疑いの眼差しを向けてきたんだよな。
見た目が痴漢しそうだって。