人間カード
リク……。
取り返しのつかないことをした。
もう時間は戻らない。
人間カードに隠されているのは、人間の悪意だけだ。
普通の人間では知り得ない、真の意味での悪意が潜んでいる。
リクは刃物男に殺された。
嘔吐を何度も何度も繰り返すと、人間は恐ろしいもので自然と心が冷静になってきた。
あれほど乱れていた呼吸も治まり、心臓の音も平穏になってくる。
目の前にはリクの姿をした中身のない人形があるのに。
何故、刃物男が俺の自宅に人間カードとなったリクを送りつけてきたのかわからない。
そもそも何で俺の自宅を刃物男が知っていた?
ユウカがどこに居るのかもわからない。
もしかしたら、刃物男は俺たちの事を知った上で会っていたのかもしれない。
俺以上に相手の事を調べて。
リクの有様を見る限り、この手段は相当手馴れている印象だ。
どうしてこうなったの?
どうして、刃物男は俺たちの事を知ったのだろう。
自宅に送りつけてきたのは、きっと刃物男からの警告だろう。
いつでも、お前を狩れると。
ユウカを探さなきゃ……。
ユウカは生きているはずだ。
そう信じるしかなかった。
俺は茫然とした気持ちの中、牢屋を後にした。
その日、嘔吐を何度も何度も繰り返す。
リクの最後の姿を想い浮かべて。
これが、人間が壊れるということなのかもしれない。
絶望と闇は等価だ。