Love nest~盲愛~
夜の蝶
「宮本様がご来店です。あかりさん、お願いします」
「はい」
「えりなさん、あかりさんのヘルプについて下さい」
「あっ、はい!」
「最初は緊張すると思うけど、あかりさんがちゃんとフォローしてくれるから」
「はいっ」
「えりなちゃん、大丈夫よ。宮本様はとっても優しい方だから」
「はい、宜しくお願いますっ!」
大理石の床、ベルベット素材のソファ、重厚なガラステーブル。
四方を壁に囲まれ、煌びやかな照明に照らされる中、飾り彫りの施されたダークブラウンの扉から姿を現したのは、黒服と呼ばれる男性スタッフ。
密室とも思える空間に色鮮やかなドレスを身に纏った女性が10数名。
明るめな色の長い髪をふんわりとゴージャスに盛り上げ、くるんと巻かれたボリュームのある長い睫毛、目元はくっきりとアイラインが引かれている。
白く細い指先にはキラキラと輝くネイルアートが施され、大きく開かれた胸元には存在感のある宝石が夜の蝶を豪華に彩る。
そして、軽い眩暈を覚えるほどの香水の香りと煙草の煙が白い柱となって、ピリピリとした緊張感が張り詰めた、ここは……。
キャバクラ『violette』の控室。
この店人気No.1のキャバ嬢が、私の指導役である“あかり”さん。
そして、その卓のヘルプに付くのがこの私“えりな”こと、古市えな・22歳。
私は今日、キャバ嬢としての人生を歩み始める。
優雅に歩くあかりさんの後を追うように大理石の床を歩み進めるが、その足取りは、極度の緊張で膝がカクカクと震えていた。
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