Love nest~盲愛~
押し葉のしおり
「んっ……」
すっかり記憶されている感触がした気がして瞼を押し上げると、Yシャツ姿の彼が目の前に。
「起こしたか?」
「起こして下さればよかったのに……」
「気持ちよさそうに寝てたから」
「えっ……?」
額に残る口づけの余韻。
彼はベッドに腰掛けながら、カフスボタンを留めている。
すぐさま上半身を起こして、彼の手元に手を差し伸べた。
「やります」
初めて彼の出勤支度の手伝いをする。
彼の部屋で休んだからこそめぐって来た機会だと思うから。
昨夜はあの後の記憶があまり無い。
再びキスをしたはずなのに……。
意識を失って、そのまま寝てしまったようだ。
「昨夜はすみませんでした」
「何故、謝る。……キスした事を後悔してるのか?」
「いえ、そうではなくて。……いつの間にか、寝てしまったようなので」
「フッ、そのことか」
後悔はしていない。
むしろ、して良かったと思っている。
彼の事を少しでも理解出来たように思えるから。
「えな」
両袖のカフスボタンを留め終え、視線を持ち上げると、彼の手が後頭部を支えるように添えられ、唇が重なった。
昨日よりも蕩けるような深いキスを。
いつキスが止んだのかも分からない。
気付いた時には、彼の指先が唇をなぞっていた。
「もっとして欲しいか?」
「……ふぇっ?」
「フフッ、もう少し寝てろ」
ボーっとする頭が枕に辿り着いた。
彼が横たわらせてくれたらしい。
滑らかな肌触りの掛け布団がふわりと掛けられ、触れるだけのキスが額に落とされた。
「帰って来たら、幾らでもしてやる」
彼は優しく頭を撫でて、部屋を後にした。
私は夢でも見てたのだろうか?