Love nest~盲愛~

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「えな様?」

「え?あ、ごめんなさいっ」


ダイニングテーブルに飾る花を生けている手が止まっていたようだ。

『帰って来たら、幾らでもしてやる』という彼の言葉が、夢だったのか、それとも現実だったのか……。

寝ぼけていて、記憶が曖昧になっているのでは?と何度も思い返してみたけれど、結局分からず仕舞い。


「昨夜は、楽しいお食事だったのですか?」

「え?」

「今朝の坊ちゃまの様子からして……」


ニヤッと不敵な笑みを向けられてしまった。

今朝の彼の機嫌がよかったということ?

昨夜の食事がよかったというより、恐らくその後の出来事のような気がする。


「今井さん」

「はい、何でしょうか?」

「恋って、どういうのを言うのでしょうか?」

「恋、……ですか?」


私の投げかけに一瞬手を止めた。

そして、柔らかな微笑を浮かべながら……。


「何てことない日常にふと思い浮かんだり、その人を想うと胸がきゅっと焦がれたり。香りやぬくもりが恋しくなったり、考えようとしなくても脳裏に思い浮かぶようになったら、それが恋かと存じますよ」

「……思い浮かんだら……?」

「坊ちゃまに、メールでも差し上げたら如何ですか?」

「メールを?」

「何時にお帰りになるのか?とか、夕食は何が食べたいですか?などは如何でしょう?」

「……そうですね」


彼からスマートフォンを貰ったんだった。

最近全く使ってなかったから、存在自体を忘れていた。


「今井さんの連絡先も入ってましたけど、今井さんにメールしてもいいんですか?」

「はい、勿論でございます。御用の際は、遠慮なくどうぞ」

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