Love nest~盲愛~
「おいっ、えなッ!……平気か?」
「ッ……っ……」
喉がカーッと焼けるように熱い。
ハァ~と息を吐き出しても、口の中が痺れているよう感じる。
これくらいしないと、聞けそうにない。
手団扇で顔を仰ぎながら気を落ち着かせて……。
心配そうに覗き込む彼は、私の手からグラスを取り上げた。
「もう飲むな」
「大丈夫ですっ……」
やっぱり、彼は優しい。
言葉はぶっきらぼうなのに、私のことを心配してくれている。
そんな彼をまっすぐ見つめて……。
「みさき……お兄ちゃん……?」
その名を口にしただけで涙腺が緩む。
懐かしさというより、本当に逢いたかったからだ。
「……えな」
優しく髪を撫でた手は背に回り、そのまま私の体を抱き寄せた。
こんなにも近くにいただなんて……。
彼の名前が変わったのは、恐らく養子に貰われたからだと思う。
それと、『みさき』というのは苗字なんじゃないかと思った。
幼い頃、彼の家に父と遊びに行った際に、『ミサキコーポレーション』という文字を目にした記憶が微かにあったからだ。
幼かった私は、下の名前ではなく苗字を名前だと勘違いしていたのだと。
3歳頃からよく遊びに行っていた。
だから、その当時に苗字と名前の区別はつかなかったと思う。
そのまま、呼び名で過ごしていたのだろう。
それが、今となってこんなにも後悔が募るとは思いもしなくて。
「何故、名乗ってくれなかったんですか?ずっと逢いたかったのに……」
「フッ、俺はすぐに分かったぞ?面影が残ってるから……」
「えっ……?」