Love nest~盲愛~
針の筵

**

彼が初恋の相手のみさきお兄ちゃんだと発覚した翌朝。

初めて彼のぬくもりを感じで目が覚めた。

今が何時なのかは分からないけれど、抱き締められて目覚めるだなんて幸せ過ぎる。


昨夜はベッドに横たわった状態で、彼に腕枕をして貰って積もる話をした。

ブランデーを煽ったこともあり、いつしか寝入ってしまったようだ。

ほんの少し髭が伸びててチクチクする。

それが、夢ではなく現実だと教えてくれているようで笑みが零れた。


「髭が伸びてる男が好きなのか?」

「え?……おはようございますっ」


私が顔を触ったから起きてしまったようだ。

目の前の喉仏が色っぽく上下する。


彼が大人の男性だと改めて実感。

私が知っているみさきお兄ちゃんは、爽やかな中学生だった記憶だから。


「いえ、……このチクチクした感触が、夢ではなくて現実なんだなぁと幸せを噛み締めてた所です」

「フッ」


きつく抱き締められた。



父の会社が乗っ取られる前から私と父の事は知っていたらしい。


実の両親が事故で亡くなり、親戚の家に養子として迎えられた彼は、虐待を受けていたと。

自分の居場所を作るために猛勉強して会社を立ち上げ、自立したという。


今でも時々嫌がらせに遭い、完全に別会社なのにも関わらず、干渉してくるらしい。

だから、一日も早く籍を抜きたいと。

その条件が結婚。


以前、私が彼を平手打ちした時の見合い相手が、今のご両親があてがった女性らしく。

結婚後も干渉する為に嫁として送り込もうとしているという。



彼にとって、近寄って来る女性は送り込まれた女性にしか思えないと。

< 119 / 222 >

この作品をシェア

pagetop