Love nest~盲愛~
無理強いはしないという。
けれど、例えふりであっても、表向きは恋人のように扱うから、バレないように振る舞って欲しいと。
このお屋敷の外では常に監視されているという。
だから、私はこの屋敷から出ることを許されなかったのだと。
誤解が誤解を招いて、あらぬ方向に考えていた自分が恐ろしくもある。
*
彼と共に朝食を摂り、彼の出勤準備を手伝う。
ネクタイは結べないから、カフスボタンだけでもと思い、両袖にカフスを着けていると。
チュッと額にキスが落とされる。
「お兄ちゃん、私のこと、好き?」
「愚問だ」
骨ばった指先が顎を捉え、上を向かされる。
自然と絡まる視線の先には、優しい眼差しの彼。
「えなは?」
「ひみつ♪」
「いい度胸だな」
「んッ……っ……」
彼の求めている答えではなかったからなのか。
ベッドに押し倒され、そのまま強引に唇が塞がれた。
けれど、その先は凄く優しく丁寧で。
頬に添えられる手も髪を撫でる手も。
ゆっくりと離される唇。
甘い余韻を残して彼の気配が遠のいてゆく。
慌てて目を開けて起き上がると、彼が驚いた様子で視線を向けた。
「どした?」
「お帰りは何時頃ですか?」
「フフッ、寂しいのか?」
「っ……」
図星だ。
彼のぬくもりが遠ざかっただけで寂しさを覚えてしまった。
目の前にいるというのに。
「会社に来るか?」
「え?……いいんですか?」
「俺の恋人だって説明するけど、それで良ければ」
「………では、お願いします」
「フッ、積極的だな」
「だって、どんなお仕事してるのか見たいもの」
「家と殆ど変わらないと思うぞ?」
「だとしても!」