Love nest~盲愛~

お昼少し前に白川さんが会社へと送り届けてくれるらしい。

一緒に昼食をして、昼過ぎは彼の部屋で過ごせばいいという。

彼は会議があるからと出勤した。

お昼までまだ時間がたっぷりとあるというのに、逸る気持ちが抑えきれない。

だって、会社勤めもしたこと無いんだもの。

父親の会社しか知らない私は、箱入り娘だと思う。

何不自由なく過ごしていたのだから。

父が亡くなるまでは……。

彼に迷惑がかからないように身支度に気を遣う。

今井さんにチェックして貰って、派手過ぎず地味過ぎず、それでいて上品な装いに仕上げて貰った。

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彼の部屋がある建物は、大手企業のビルみたいな感じではなく、雰囲気的には美術館や博物館に近いらしい。

都会のど真ん中というイメージだったが、そうではなくて、郊外にある森の中に佇む感じで、ごく限られたスタッフが勤務しているという。

もちろん、都会のど真ん中にも自社ビルが聳え立っているらしいが、そこには養父母の監視があるという。

毎週のようにそのビルで会議をするらしいが、それが一番の苦痛だと。

彼の部屋がある本社に養父母や義兄が来社することがあるらしい。

それが、事前に知らせもなく突然来るらしくて。

今日がその日でなければいいな、と彼は呟いていた。


彼を育てた代わりに、彼が稼いだお金にたかるような人々。

自分たちの会社があるだろうに。

たった10年ほどで売り上げも規模も抜き去ったことが気に食わないらしい。

性根が腐ってる人って、どこまでも腐り切っているらしい。

父の会社を奪った人たちと同じだ。

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