Love nest~盲愛~
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白川さんの運転で彼の会社のエントランス前に横付けされた車内で待っていると、秘書と思われる男性と彼が歩いて来た。
白川さんが後部座席のドアを開けると、彼が乗り込んで来た。
その際に、秘書らしき男性と視線が交わった。
彼より少し上くらいの年齢に見えるその人は、少し華奢な感じで見た目が理系インテリな感じの少し冷たい印象だ。
車内から会釈をすると、ドアの向こうで深々とお辞儀をした。
社長である彼に『いってらっしゃいませ』と言っているように。
車は軽やかに発進する。
近くのお店に予約してあるらしい。
振り返りエントランスで見送ってくれた彼をバックガラス越しに眺めていると。
「佐川が気になるのか?」
「佐川さんって言うんですね」
「あぁ。俺の本当の父親の会社で専務をしていた人の息子だ」
「そうなんですね。何だか見た目が冷たそうで、スパイかと思っちゃいました」
「フフッ、それはない。眼つきは悪いが、仕事は出来る男だ」
「それなら安心です」
「あーいうタイプの男が好みかと思ったんだが」
「それはないです!」
「じゃあ、どんなのが好みなんだ?スポーツマン風?可愛い系か?まさか、爺専か?オヤジ好みとか言うなよ?」
「ンフフフッ」
「白川、おかしかったか?」
「はい、若様。若様の口から先ほどのような言葉が聞けるとは思いませんでした」
ルームミラー越しに白川さんに揶揄われている。
「で?えなの好みは?」
「見た目なら王子様系ですかね?性格で言うなら、優しい紳士タイプで。絵本から出て来たような?」
「良かったですね、若様」
「何がだ」
「若様のことを仰って下さってますよ」
「あ?……フッ」
白川さんにはバレたようだ。