Love nest~盲愛~
昼食を終え、会社へと戻る。
先ほどと同じにエントランスに横付けされた車。
彼と共に正面玄関から中へ歩み進めると、本当に美術館かと勘違いするほど天井が高く、至る所にオブジェ的彫刻らしきものが
点在している。
静けさに合うように微かにクラシックのような曲がどこからともなく流れて来る。
長い足で優雅に歩く彼に置いて行かれないように小走り気味にあとを追うと、彼が急に停止した。
「んッ?!」
「悪い」
「え?」
「ん」
「……会社ですよ?」
「気にするな」
「………では」
ガラスに映っていたらしい。
私の小走り気味な歩行が。
彼が立ち止まって手を差し伸べてくれた。
そんな行動一つで嬉しくなる。
お姫様をエスコートするみたいに手を差し出されては乗せるしかない。
思わず笑みが零れながら、彼の手に自身の手を乗せた。
彼と手を繋いで社内を歩くなんて……。
ガラスに映る自分が本当にお姫様に見えた。
社長室は2階にあり、シックな色調なのに洗練された上品さを兼ね備えた造りで、高級スイートルームのような海外の高級リゾートのような雰囲気も醸し出している。
壁一面の大きな窓ガラスから陽の光が入り込んでいるのに、緑に囲まれているからなのか、それほど眩しく感じない。
艶消し調の本革レザーのソファーは触り心地が抜群で、座り心地は確認済み。
だって、自宅の彼の部屋のソファーと同じメーカーなのだと直ぐに分かった。
「失礼します」
秘書の佐川さんが珈琲を手にして現れた。
「佐川、紹介する。彼女が古市えな」
「初めまして、秘書の佐川 学と申します」
「先ほどは……。初めまして、古市えなと申します。どうぞ宜しくお願いします」