Love nest~盲愛~

彼が言っていたように、会社での彼は自宅と左程変わらず。

黙々と無言でパソコンや書類を処理している。


強いて言うなら、電話で指示を出す姿が新鮮に見えた。

内線はもちろんのこと、外線の取次ぎの他にスマートフォンも着信になり、パソコンでも誰かと話して指示を出している。

その真剣な表情がカッコよくて、つい盗み見してしまっている。


何もせずにじっと座って待つだなんて出来ないから、佐川さんの仕事を分けて貰って、ミニパーティーの招待状作りを手伝っていると、今井さんからメールを受信した。

『初めての会社は如何ですか?』と。

すぐさま『とても新鮮で楽しいです』と返信すると、安堵した様子が送られて来た。

仕事中にメールのやり取りをしてはいけなかったのか。

彼から物凄い鋭い視線が向けられていた。


「ごめんなさいっ、しまっておきます」

「誰からだ?」

「え?……あ、はい。今井さんですけど」

「何だ、今井か」

「……はい」


もしかして、嫉妬してくれたのだろうか?

でも、このスマホの連絡先を知っている人なんて限られているのに。

誰と勘違いしたのだろうか?

白川さんや今井さんにまで嫉妬するとは思えないし……。


不思議に思いつつも、彼のちょっとした表情が見れることが何よりも嬉しくて。

だって、いつもなら夜に数時間しか会うことも見ることも出来なかったのだから。


彼がみさきお兄ちゃんだと知る前ならその数時間でも十分だったけれど。

今はもう違う。

もっと色んなお兄ちゃんが見たいし、ずっと一緒にいたいと思える。


私にとって彼は、辛い時にこそ助けてくれるヒーロー的存在で。

唯一無二の人だと思っていたから。

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