Love nest~盲愛~

部屋に入ってすぐの所で、彼は腕組をして仁王立ちしている。

私がドアの内側で停止したからなんだけど。

そんな私を見下ろす彼の視線に合わせるように顔を持ち上げて。


「この関係が何なのか、はっきりさせたい」

「はっきり?」

「……ん」

「例えば?」

「さっきも確認したら、お金が入金されてた」

「ん」

「それって、私をお金で買ってるってことでしょ?」

「……そうなるのか?」

「だって、最初に会った時に等価交換するっていったじゃない」

「してるだろ」

「してないでしょ」

「毎日俺の傍にいるだろ」

「いるだけで、あの大金なの?」

「少ないくらいだ」

「………ついて行けない」

「俺にとったら大した額じゃない」

「それはそうかもしれないけど」


会話にならない。

彼の恋人になるなら、お金は貰えないと言いたいのに。

彼の口ぶりだと、小遣い代わりにくれてる感覚なんだと思う。

どうしたら通じるの?


「この家に住む対価だろ、あの金は」

「住むのと、恋人とか妻になるのとは、別問題だよ?」

「何故だ?」

「何故って……、普通、恋人や妻に毎日大金を手渡して一緒に住むもの?」

「じゃあ、月末に纏めて渡そうか?」

「そういう問題じゃないんだってばっ!」


彼は何が何でもお金を支払いたいのかな。


「この家から勝手に出ていくような真似はしないし、いつでもどこでもちゃんと恋人でも婚約者にでもなるから。だから、お金はもう支払わなくていいから」

「それは無理だ。聞き入れられない」

「……何で?」

「俺の気が済まない」

「えぇ~っ」

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