Love nest~盲愛~
甲高い声色。
明らかに軽視しているような、そんな素振りで。
しかも、私の左足を見て、鼻で笑った。
彼から与えられたアンクレットを……。
生きていれば、友好的な人ばかりじゃないのは分かっている。
世の中、多様な人間がいるのだから。
私に敵意を剥き出しするのは構わない。
だけど、彼……、哲平さんを傷つけた人は許さない。
一生消えない傷を幾つも負った彼。
背中や肩や腕に無数の傷が残っている。
目の前のこの人が付けたとは言い切れないが、少なくとも可能性はある。
それに、体だけじゃない。
心にだって、一生消えない傷を負っているんだから。
深夜に魘される彼を目の当たりにして、胸の奥が抉られた。
見た目は何不自由なく暮らしていそうなのに、身も心も傷だらけの彼。
今だから分かる。
お金をかけて傷を綺麗に消し去る治療だって出来ただろうに。
あえてそれをしなかった理由が。
この目の前の人とその家族へ、復讐のような見返しのような。
彼らよりももっと成功して見返す為にあえて残しているんだと。
その傷を目にする度に、決意が揺るがないように。
(挨拶した方がいいですか?)
白川さんにだけ聞こえるように呟く。
すると、彼はぎゅっと目を瞑り、小さく頷いた。
仕方ない。
彼の顔は潰せないから。