Love nest~盲愛~
狂おしいほどの盲愛

「えな」

「はい」

「明日、一泊で出掛けるから」

「はい、分かりました。お気をつけて行ってらっしゃいませ」

「お前もだ」

「え?……私も?」

「そうだ」

「あ、……はい」


仕事から帰宅した彼が、ネクタイを緩めながら口にした。

彼の会社のエントランスで、彼の養母と対峙したのが1週間ほど前。

あの後、特に変わった様子もなく、彼は平然を装っていたけれど。

念の為にと、会社への立ち入りは控えるように言われていた。

少しずつ彼のことも、彼の会社のことも理解出来るようになっていたというのに。


白川さん経由でなのか、あの日、帰宅したら今井さんが物凄く心配してくれて。

その様子から、彼と養父母との関係はあまりにも異常なのだと肌で感じた。

今井さん曰く、彼が強運の持ち主だからこそ、今まで生きて来れたのだとか。

何度も殺されかけていたと、今になって知らされた私は、今まで以上に彼のことが心配でならない。


彼が何をしたというのだろうか?

彼の両親が築き上げた会社欲しさにそこまでする意味が分からない。

金亡者という言葉があるが、命より尊いものは無いのに……。



夕食を済ませ、2階へ戻りながら珍しく彼が振り返った。


「何か?」

「いや、何でもない」

「何か、仰りたい事があるのでは?」

「……シャワー浴びてから来い」

「ん?……はい、分かりました」


何か言いたい事がありそうな感じ。

だけど、それを呑み込んだようだ。

けれど、あえて追及はしない。

言いたい事があれば、そのうち言うだろうから。

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