Love nest~盲愛~
いつものように自室でシャワーを浴びて、髪を乾かし、スキンケアを施す。
今井さんが用意してくれたネグリジェは滑らかなシルクであしらわれた高級品。
このお姫様が着るような寝衣も、すっかり着慣れてしまっている。
鏡に映る自分の姿に、物足りなさを感じて。
分かっている。
どんなに美しく綺麗な寝衣を身に纏ったとしても、私には色気が足りないことくらい。
22歳という年齢を理由には出来ない。
童顔なうえ、貧相な体つきだからだ。
経験豊富な彼を満足させることが出来るような女性とはかけ離れている。
今井さんに、『どうしたら女性らしく色気が出ますか?』と尋ねた事がある。
怖いもの知らずもいい所だが、その時はまだ彼のことが『みさきお兄ちゃん』だと知らず。
彼から愛想を尽かされないようにするために必死だったからだ。
彼女の答えは『そのままで十分ですよ』というものだったが。
そのまま……。
手の施しようがないという意味だろう。
恋人という関係ならまだしも、結婚するとなると一生という枠組になる。
『可愛い』だけでは、きっとすぐに飽きられてしまいそうだ。
虜に出来るようなスキルもなければ、魅力的なボディーも持ち合わせていない。
会社を経営するにあたり、彼を支えれるほどの知力もないうえ、金銭的なバックアップも出来ない私は、彼にとってお荷物でしかないように感じていた。
『岬』の名とご両親の会社を取り戻すため。
それだけしか、私に出来ることはなさそうだ。