Love nest~盲愛~
コンコンコンッ。
彼の部屋のドアをノックすると、中から声が聞こえて来る。
静かにドアを開けると、彼の姿はどこにもない。
「哲平さん?」
「あ、ここだ。……クローゼット」
部屋の奥から声が聞こえて来た。
声のするクローゼットへと向かうと、彼は何やら探し物をしている様子だ。
「何かお探しなのですか?」
「ん、……アルバムを……あ、あった」
「アルバム?」
彼の手には分厚いレザー調のアルバムが。
「えなの小さい時の写真があるはずだ」
「えっ?!」
彼は愛用のソファーに腰を下ろすと、アルバムを私に差し出した。
「見てもいいんですか?」
「勿論だ」
幼い頃、よく彼の家に遊びに行った記憶がある。
それと、私の家にも彼が遊びに来た記憶も。
お互いの親がとても仲良かったこともあり、一緒に旅行に行った記憶もある。
自宅から追い出される時、アルバムを持って出たけれど、彼の写真は1枚もない。
思いがけない出来事に戸惑いつつも、昔の彼の姿をもう一度見れるだなんて……。
ドキドキしながら、表紙を捲った。
そこには、可愛らしい彼の幼少期の写真が何枚も綴られてある。
ご両親の愛情の深さが滲み出ているというか。
彼が屈託のない笑顔でブランコを漕ぐ姿が眩しく見えた。
何枚かページを捲った、その時。
一瞬にして、涙腺に涙が浮かんだ。
そこにいたのは、幼い日の私と私の父親。
バーベキューをしている時に撮られたもので、真っ黒になったワンピース姿の私を愛おしそうに抱き上げる父の姿だ。