Love nest~盲愛~

他にも沢山の写真が綴られていて、父と、彼と彼のご両親との想い出が蘇った。


「えな」

「ありがとうございますっ」

「こういう家庭を作ろうな」

「ッ?!………それって、プロポーズですか?」

「フッ、……いや」

「えぇ~っ!」


涙ぐむ私の背中を優しく摩る彼。

てっきりプロポーズかと思ったのに、違うらしい。

すっかり涙が引っ込んでしまった。


「だが」

「………だが?」

「明日、プロポーズするから」

「えっ………」


プロポーズ、を『明日する』宣言?

彼の思考は複雑すぎる。

いまいち何を考えているのか分かり辛い。

だけど……。


「では、印鑑を持参しますね」

「ん~、それは明日でなくてもいいが、気が変わらぬうちに押して貰わねばならないから、持参しとけ」

「フフフッ、はいっ」


その後もアルバムを見ながら、曖昧だった記憶を語り合いながら、彼の優しさに触れた。


「哲平さんの好みの女性って、どんな人ですか?」

「どんな……、難しいな」

「難しいですか?」

「ん~、そうだな」


ブランデーを一口口にした彼は、骨ばった指で私の顎を捉えた。


「俺を満足させるキスが出来る女」


キュッと口角を持ち上げ、不敵な笑みを浮かべた彼は、試すような視線を向け唇を塞いだ。

ブランデーの濃い味が舌先から伝わる。

執拗に絡め取られる舌に悶絶しそうなほど、濃厚なキスに呑まれてしまう。

息継ぎの間もままならないほど、絶え間なく与えられる甘美な刺激に意識が朦朧として来た、その時。

幼い子供から玩具を取り上げるかのように、パッと唇が離された。

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