Love nest~盲愛~

何が起きたのか分からない。

甘い痺れの余韻で蕩けそうな思考と、もっとして欲しいという欲望の狭間でゆっくりと瞼を押し上げる。


「こういう顔が出来る女は、俺好みだ」

「っ……」


恍惚状態の私の顔を見たかったらしい。

だからって、急にキスを止めるとか……鬼畜だ。


その気にさせておいて、お預け状態。

こういうのも駆け引きなのかもしれないが、恋愛初心者の私にはそんな高度な技を持ち合わせてるはずもなく。

目尻に涙が滲み始める。

完全に遊ばれているというか、お子様扱いなのかもしれない。

そんな私の目尻にキスをした彼は、いつものように額や頬、鼻先にキスを落とし、首筋に唇を這わせ始めた。

僅かな痛みを引き連れて、幾つもの赤い薔薇を散らす彼。

すっかり慣れたこの行為も、彼の愛情なのだと改めて実感した、その時。

腰元で結ばれたガウンの紐がするりと解かれた。


彼の入浴を手伝って以来の出来事に、思わず体がびくっと震えてしまう。

言葉では幾ら乱暴なことを言っても、未だに一線は越えていない。

『入籍』という事を目前にして、気持ちが少しずつ変わったのだろうか?

だけど、キスならまだしも。

その先をしたいと思えるようなほど、私には魅力がないように思うのに。


そう言えば、あかりさんが言ってたっけ。

男性は愛が無くても女性を抱く、と。


彼が『みさきお兄ちゃん』だと知る前なら、きっとそういう行為も受け入れられたかもしれない。

だけど、知ってしまった今では、我が儘だと分かっていても欲しくなる。

彼からの『愛』を。


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