Love nest~盲愛~

「杞憂だ」

「……え?」

「だから、杞憂だと言ってるんだ」


優しく髪を撫でられる。

私の考えすぎということ?

でも……。


「全て……とは、殊勝な心意気だな」

「妻になるって、そういうことなのでは?」

「無論だ」


俯く顔を再び持ち上げられる。

自然と絡む視線の奥。

彼の熱のこもった視線が何を示しているのか、何となく分かる気がした。


「身も心も全て俺のものだ」


重ねられた指先が絡まり、ソファーに張り付けられた。

更に体も張り付けるように覆い被さる。


「他の男を知る術は無くなるぞ?」

「今なら、知るような事をしてもいいのですか?」

「えなにその度胸があるなら」


私にそんな度胸がない事を知ってて言ってる。

これは彼なりの優しさなんだと、私は知ってるから。

最終勧告みたいなものだと思う。

今ならまだ引き返せるぞ?と言いたいのだと。

けれど、例え言い方を変えたとしても、答えは変わらないと思うから。


「私の望むものと私の全てを等価交換すると約束した筈です。だから……」

「……だから?」

「哲平さんの『愛』を下さい」

「フッ、俺の『愛』か」

「はい。……ダメですか?」

「後で、やっぱり要らないとか言わせないぞ?」

「言いませんよ、そんな事」


揶揄うような視線を向けたかと思えば、優しい眼差しで安心させてくれる。

全てを彼に任せていれば大丈夫、そう思わせてくれる安心感を覚えた、その時。

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