Love nest~盲愛~

「今井さん、一泊なのに何着詰めるんですか?」


翌朝、朝食を済ませた私は自室に戻ると、キャリーケースに荷造りしている今井さんを見つけた。

事前に一泊分の着替えや必要な物を自分で詰めておいたのに、それらを全部出したようで。

ベッドの上に自分が詰めた物が出されている。


「一泊というのは建前です。連泊してもいいように準備するのが気遣いですよ」

「……なるほど」


大人の世界は分かり辛い。

何処に出掛けるのかも知らされていないのに、どんな物を用意していいのか分からないのに。

今井さんに任せておけば安心だ。


「えな様」

「はい」

「坊っちゃまの事、どうぞ宜しくお願い致します」

「はい」


今井さんにとったら息子も同然。

心配でならないのだろう。


コンコンコンッ。


「はい」

「えな、30分後に出るぞ」

「はいっ」


彼が呼びに来た。

いよいよだ!

今日、彼からプロポーズされる。

ワクワクというより、不安な方が大きい。

彼が私を選んだ事を後悔しないように、私に出来る事は何でもしないと。


「えな様、お荷物は車に積んでおきますね」

「ありがとうございます」


いつの間にか詰め終わってたようで、今井さんはキャリーケースを引いて部屋を後にした。


「着替えなきゃ…」


今井さんが準備してくれた服に着替える為、ウォークインクローゼットに向かう。

白を基調にアリスブルー色のリボンがあしらわれた上品なワンピース。

それに刺繍が施されたカーディガン。

絵に描いたようなお姫様仕様の服が掛けられていた。

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