Love nest~盲愛~



「ここは……」


彼の運転で到着したのは、私の両親が眠る聖苑。

彼が後部座席から白い百合の花束を取り出した。

車内に立ち込める香りがしていて、花束がある事は分かっていた。

私へのプレゼントかと思っていたのに、まさか私の両親へのプレゼントだとは…。


「何でもご存じなのですね」

「俺を誰だと思ってる」


両親の遺影を堂々と飾りたくて彼の提案を受け入れたのがついこの間のよう。

こんな風に、お墓参り出来る日が来るだなんて。


彼と共に両親のお墓に花を供え、これまでの事を報告する。

天国で見守ってくれているだろうけど、最大の感謝は、幼い頃に彼との思い出を作ってくれた事だ。

あの日々が無かったら、きっと今は無いと思うから。



聖苑を後にし、彼は再び車を走らせた。


「次は何処へ向かってるんですか?」

「着けば分かる」


教えてはくれないらしい。

けれど、彼の表情からして、悪い場所では無さそうだ。

30分ほど走らせ、着いた場所は……。


「わぁ、まだあったんですね!」

「懐かしいだろ」

「はいっ」


彼のご家族とよく食べに来たレストランだった。

海に程近い事もあり魚介類が豊富で、ホイル焼きが特に好きで、開けるのをいつもワクワクしていた記憶がある。

そう言えば、彼の好物もシーフード系だ。

あの頃から好みは変わってないということなのね。


店内に入ると、昔と変わらず優しい笑顔で出迎えてくれるご夫婦。

彼のご両親と古くから親交があったらしく、亡くなってもこうして連絡を取り合う仲なのだとか。

お金では買えない、かけがえのない思い出だ。

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