Love nest~盲愛~
美味しいお料理を頂き、腹ごなしに近くの砂浜を散歩することに。
今井さんが用意してくれたバレーシューズに履き替えると、スッと差し出された彼の手。
王子様が手を差し伸べてくれてるみたいだなぁ、だなんて見惚れていたら、ぎゅっと掴まれてしまった。
それはそれで嬉しいのだけれど。
「えな」
「はい?」
「プロポーズの言葉は、何て言って欲しい?」
「えっ……、それ、本人に聞きます?」
彼の考えていることは複雑すぎる。
プロポーズって、サプライズ的に準備してするものじゃないの?
そもそも、今日されると分かっていること自体が既にサプライズではないんだけれど。
彼といると、常識が常識でないというか。
常軌を逸しているから、これが常識なのかもしれないけれど。
「返事はOKしかないわけだし、婚姻届けに判を押すこと前提になってるわけだし。他に何が必要なんだろうか?と思って」
「それはそうかもしれないですけど、……やっぱりそこは、甘く囁いて貰いたいというか、一生の想い出になりますし」
「そういうものか?」
「はい、そういうものですよ、きっと」
彼に合わせるのは難しい。
私の常識が間違ってるんじゃないかとさえ思えて来る。
最近、歩幅を合わせて歩いてくれるようになった彼。
それだけでも十分すぎるほど嬉しいのだけれど。
人間、習慣って怖いなと思う所が、こういうことなんだと思う。
上質な生地で出来た寝衣に慣れてしまったのもそうだけど、こんな風に小さいときめきが当たり前になってしまう事が。
いつまでも、この小さなときめきを忘れずにいないと、罰が当たりそうだ。