Love nest~盲愛~

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「食品も?」

「作るのが嫌ならデリバリーかケータリング頼むけど」

「何処に泊まるんですか?キャンプ場みたいな所?」

「いや、普通の家だけど。キャンプがしたいのか?」

「え、あ、そうじゃなくて……」


会話がいまいち噛み合わない。

どんな所に泊まるのかを教えてくれたら、必要な物を買い揃えれるのに。

映画館を出て、ショッピングモール内をぐるっと廻り、服や靴や小物類や化粧品に至るまで彼に買って貰った。

勿論、選んだのは彼。

私はそれらを眺めていただけ。

そして、私達が今辿り着いたのが食料品売り場。

彼の話から、泊まる場所での食事は自炊なのだと理解したけれど、それならそれで、ずばり言ってくれてもよさそうなものなのに。


母親がいない生活が長かった事もあり、家事は得意ではないが、料理は結構何でも出来る。

桐箱に入れられて育ちはしたが、お手伝いさんに教わって料理だけはよくしていた。

とはいえ、舌の肥えた人を唸らせるほどの腕前ではない。


「何が食べたいですか?簡単なものなら作れます」

「任せる」

「任せる……ですか」


それが一番難しいのに。

とりあえず、夕食はパスタとスープとサラダにして、翌朝の朝食用にパンや卵やハムといったオーソドックスな材料を次々をカゴに入れる。

フルーツを手にした所でふと思い浮かんだ。


「哲平さん、お酒飲みます?おつまみみたいな物を作りましょうか?」

「任せる」


それしか言えないの?

無口すぎるのも問題アリだわ。



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