Love nest~盲愛~
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「えっ……」
買い物を済ませ、到着した先に言葉を失った。
だって、ここは……。
「突っ立ってないで、入るぞ」
「入れるんですか?」
「あぁ」
「嘘っ……」
目の前の建物は、私が父と暮らした生家だ。
庭はあの頃とは違い、あまり人の手が入ってないように思えるけれど、建物自体はあの頃のまま。
彼に手を引かれ中に入ると、多少殺風景な感じは否めないが、直ぐにでも住めそうなほど綺麗に手入れされている。
「哲平さん」
「まずは買ってきた物を冷蔵庫に入れろ」
「あっ、はい」
聞きたいことは山のようにある。
何から聞いていいのか、頭の中が真っ白に。
彼は車のトランクから荷物を下ろし、中へと運んでくれた。
「1人で作れるか?」
「はい、大丈夫です」
「じゃあ、俺は風呂と寝室の用意して来るな」
「……はい」
自宅では聞いた事のないセリフに驚いてしまった。
自身で用意するの?
私がすべき事なんじゃなくて??
慌てて浴室に向かうと、既にズボンの裾を捲ってスポンジで洗っている彼が視界に映った。
「どうした?」
「私がしましょうか?」
「これくらい出来るから平気だ」
「でも……」
「西賀の家に貰われてから、召使いみたいにこき使われたら大概の事は何でも出来る」
「えっ……」
「今の生活からは想像も出来ないだろ」
「はい」
自嘲気味に笑う彼。
冷遇されていた過去がまた明らかになった。