Love nest~盲愛~
「えな、ちょっといいか」
「はい?」
テラスから部屋に入ると、ソファーに座る彼が大きな封筒と書類らしき物を幾つか差し出した。
彼の横に座り、それらを眺めた、次の瞬間。
「この家の登記済権利証とこの間えなが話してた海沿いの別荘の登記済権利証。それから、えなの父親の会社の登記に関する書類一式がこの封書の中に入ってる」
「えっ、ちょっと待って下さい」
「何だ?今の説明で分からない所があったか?」
「いえ、そうではなくて。何故、これらを哲平さんが持ってるんですか?」
「取り戻したからに決まってるだろ」
「………」
この生家は何となく分かる気がするけれど、別荘や父の会社に至るまで取り戻したって?
どれだけ大変だったのか、想像もつかない。
この家だけでも、築年数は経ってるにしても、芸能人の家も多く建ってるような別荘地みたいな場所だから、土地代だけでもかなりすると思うし。
父の会社だなんて、支店も含めたら相当な規模なはず……。
「哲平さん、何者ですか?」
「俺は俺だ」
しれっと言い切る彼が、とてつもなく恐ろしくも感じる。
彼に出来ない事なんて無いんじゃないかと。
「本題に入っていいか?」
「え?まだ本題に入って無いんですか?」
呆れた。
まだ続きがあるだなんて……。
「これらは全てとある人物の手に渡っていただろ」
「はい。父の弟が詐欺まがいで騙されたみたいですけど、売り渡したみたいで。その方に手渡ったはずです」
「それが、西賀 和樹、俺の養父だ」
「え……」