Love nest~盲愛~
彼の話だと、哲平さんの母親の兄にあたる西賀 和樹は、哲平さんのご両親が亡くなり、妹夫婦の会社や家も全て自分のものにしたらしい。
まだ未成年だった哲平さんを引き取るという名目で。
更には、哲平さんと親交のあった私の父親の事も知っていて、亡くなってすぐに弟(叔父)が跡を継いだが、経営には不向きで直ぐに傾いてしまった。
その時に、買い取ったのが西賀コーポレーションだと。
不慣れな業種という事もあり、別の人に売り渡したらしいが、それをとある人物を介して取り返したという。
「俺の取引相手で、最も信用出来る男なんだが、その人を緩衝材というか隠れ蓑みたいにして、西賀から取り戻す為に一役買って貰ったというわけだ」
「聞いてるだけで眩暈がして来ます……」
「その人物は御影 京夜というんだが、全国展開してる御影百貨店とか御影グループのホテルとかあるだろ」
「あ、ありますね。高級品を扱うイメージですけど」
「あの御影グループの御曹司だ」
「ええええぇ〜〜っ!?」
「女嫌いで有名だった男が、少し前に結婚したんだが、スーパーモデル並のすらりとした奥さんだよ」
「そうなんですね〜。何処でその御影さんとお知り合いに?」
「あー、それか。雑誌の対談で。注目株の青年実業家と財閥の御曹司とかそういう感じの」
「そんなのがあったんですね」
彼の話だと、お互いに周りにチヤホヤされるのが苦手なのが似ていると感じ取って以来、交流を深めたのだとか。
直ぐに意気投合して、これまでのことを打ち明けた上で、何年もかけてここまで仕上げたという。
奪うのは簡単でも、相手にその先を読まれないようにしながら……。